第5回歯あわせ感動物語優秀作品

歯科医院名 : 医療法人育歩会坂井歯科医院 様
お名前 : 中埜秀史 様
資格 : 歯科医師
題名 : 坂井歯科医院に出会えて良かったわ!

ある日、上顎前歯部のブリッジが今にも外れそうな状態の70歳代女性が受診された。
「○○さん、私が担当させて・・・・」
と言うや否や○○さんは、
「前歯がとれそう!なんとかして下さい!」
と懇願された。

ブリッジの支台歯は殆ど残す事ができない状態で、こういった場合は予め印象を採得しておき、ブリッジを外すか抜歯をする同日に装着できる即時義歯を用意しておく方法があるが、印象を行うとブリッジは外れて元に戻せないと思われた。

私が悩んでいると、ベテランの歯科助手より、
「先生、あれをつかったらええやん!」
と。その「あれ」とは、日常使用している印象剤より精度は劣るが早く印象を採得でき、しかも外しやすいとう代物であった。
恥ずかしながら「あれ」の存在を知らなかった私は、口腔外で試しに練和してみたところ、「これならいけるかも・・・・」。患者様には前歯が抜けてしまうかもしれない事を説明した上で、「前歯がないままで帰さないぞ!」という強い祈りを込めて慎重に印象を行い、なんとか前歯が外れず印象を採得できた。

坂井歯科で勤務する前は、総合病院で約13年間、口腔外科専門医として日々手術をこなしてきた。当時の私は、患者樣から「抜歯後に目立つのでなんとかなりませんか?」と相談されても、「後で、かかりつけの歯医者さんでみてもらって下さい」と簡単に答えていた。
病院歯科を退職し、開業前の修行で坂井歯科にてお世話になることとなったのだが、自分がいざ「かかりつけの歯科医」になってみて、今まで安易に言っていた事がいかに難しい事なのかを痛感させられた。

今から振り返ると、開業医で勤務を始めたばかりは慣れない事ばかりであったが、一緒に考えてくれる歯科助手や歯科衛生士、頼もしい同僚の歯科医師がいてくれたお陰で今までやってこられたのだと思う。院内のスタッフだけでなく出入りの技工士さんも強い味方で、少しでも多く患者様の要望を叶えられる義歯の設計を一緒に考えてくれた。

今回もその甲斐あってか無事、ブリッジを除去した同日に即時義歯を装着する事ができた。○○さんは、どうやら抜歯しないといけない事を分かっていたため受診の足が遠のいていたらしい。義歯装着に際し抜歯も要したため素早く抜歯を済ませると・・・・・○○さんは、
「全然怖くなかったです。もっと早く来たら良かった!先生、抜歯がお上手ですね!」
って褒めて下さった。

今まで数え切れない程の抜歯をこなしてきたが、初めて心から褒めてもらった様な気がした。
以降、○○さんは来院する度に私の紹介カードを持って帰られ、知人の方に配って下さった。時には家庭菜園の写真を見せて下さり、自作のプチトマトやゴーヤを差し入れして下さる時もあった。

そんな○○さんがある日、
「しばらく(坂井歯科に)来られないかも・・・・」
と。お話を伺ってみると、近々、親類が暮らす東北地方でお好み焼き屋を開業するため転居されるとのことであった。

坂井歯科の理念は、「患者様が坂井歯科に出会えて良かったわと思ってもらえる歯科医院でありつづける」ことである。○○さんは
「先生に歯を入れてもらって、色々やる気がでてね!本当に坂井歯科に出会えて良かったわ。これから社長になって一旗あげようと思うんですよ、人生これから!」
とおっしゃった。

開業を間近に控えた私は同級生の開業ラッシュがとうの昔に過ぎ去り、出遅れ感の漂う気持ちであったのだが、○○さんの一言で「私もこれから一旗あげる、人生まだまだ」と思えるようになった。これから私は坂井歯科で出会った仲間や多くの患者様に教えてもらった経験を大切にしつつ、自分の医院を創造していこうと思う。最後に、開業できる自信を私に与えて下さった坂井歯科医院の全スタッフ、そして坂井秀明理事長先生に感謝の念をこの場をお借りして述べさせてもらいます・・・・・一勤務医の立場から、

「坂井歯科医院に出会えて本当に良かったわ!」